経営を伸ばす社長のための

みらい会計10問10答

Q&A 一覧

Q1 「良い経営の会社」「伸びている会社」と言える指標はありますか?

A1
まずは「資金繰りのない会社」、次に「RPG(対粗利利益率)20%以上」、そして「経常利益1億円以上」の順番に達成を目指しましょう。
経営者の仕事は会社の経営を伸ばすことです。会社の資金繰りは、会社が生き延びるための仕事であって本来的な経営者の仕事ではありません。ですから、まずは会社を資金繰りのない状態にすることが大切です。
次に、どんなことがあっても倒産しない会社にするためには利益を出しながら内部留保を高めていく必要があります。利益率にはいくつもの指標がありますが、未来創造税理士法人ではRPG(対粗利利益率)を重要視し、これが20%を越える状態の維持を目標にしていただいています。
そして、安定して利益を生み出せる体制が作れたら今度は規模(経常利益1億円以上)を求めていきます。利益があまり出ないまま売上規模のみを追い求めると、会社の知名度は上がりますが、不測の事態が起きるとすぐに倒産の危機に遭う不安定な体質の会社になってしまいますので注意してください。

Q2 「資金繰りのある会社、ない会社」とは、どのような意味ですか?

A2
「資金繰りがある会社」とは、買掛金の支払や借入金の返済のための資金が足りているかどうかを気にしている会社、「資金繰りがない会社」とは、預金残高を気にせず経営ができている会社をいいます。
給料日に社員に支払う給料や、月末に取引先に支払う買掛金の資金が足りているかどうか、銀行口座の残高を気にしたり、銀行と交渉して決済資金を融通してもらうことなどは、経営者の本来の仕事ではありません。当然のことですが、このような資金繰りに時間や意識を取られることなく、「どうすれば経営を伸ばせるか」に集中できる状態が作れると、自ずと会社の経営成績が向上していきます。ですから、利益を生める状態を維持し、内部留保を厚く積んで、資金繰りを考えずに経営できる状態を目指してください。

Q3 なぜ利益が出ているのに経営にいき詰まる会社があるのですか?

A3
①入金されていない売掛金がある、②在庫が負担になっている、③投資が過剰になっているの3つの原因があります。
会社は赤字になったときではなく、お金(キャッシュ)がなくなったときに倒産します。会計上利益が出ていても、社員の給料や仕入れ代金、銀行の返済や税金の支払いができなくなると、経営は行き詰まってしまいます。このような状態になってしまう原因は、主に3つあります。

①入金されていない売掛金がある
契約が成立し商品を納めたりサービスを提供すると、その時点で売上が計上され、利益が出ることになります。しかし、代金の回収は翌月だったり、3か月サイトの手形を受け取ったりした場合には、キャッシュはないのに利益が出ている状態になります。利益分の納税もしなければならないので、余計にキャッシュフローを圧迫することになります。

②在庫が負担になっている
たとえば10万円を払って材料を仕入れ、売価5万円の商品を4個製作し、実際に2個が売れたとしましょう。この場合、売上が10万円であるのに対し、原価は材料代金として支払った10万円全額ではありません。原価になるのは、売れた分(5万円)だけで、残りの5万円は資産(在庫)に計上されてしまうので5万円の利益がでて、税金を払わなければなりません。キャッシュフローはマイナスになってしまいます。

③投資が過大になっている
たとえば、商品を製造するための機械を1000万円で購入し、代金を銀行借入でまかなったとします。法定耐用年数が10年であるのに対し、借入の返済を5年でしなければならないとすると、減価償却費として経費にできるのは年間100万円(均等償却の場合)ですが、銀行への返済は毎年200万円しなければなりません。十分な利益を出さないと返済資金がショートしてしまいます。

Q4 RPG(対粗利利益率)という言葉を初めて聞きました。どういう意味ですか?

A4
①RPGとは Ratio of Profit for the Gross-margin の頭文字をとったもので粗利(売上総利益)に対する利益率を意味します。
RPGは、売上から売上原価を控除した残額(粗利=売上総利益)に対し、何%の営業利益があったかを計算したもので、以下の計算式により算出することができます。

粗利(売上総利益) = 売上 - 変動費(売上原価)
営業利益 = 粗利(売上総利益) - 固定費(販売費及び一般管理費)
RPG(対粗利利益率) = 営業利益 ÷ 粗利(売上総利益) × 100

Q5 なぜ営業利益率や経常利益率ではなく、RPG(対粗利利益率)を良い会社の指標にするのですか?

A5
業種にかかわらず会社の収益性や安全性を計る指標になるからです。

会社の収益性を計る指標としては、仮に売上の何%を失っても倒産せずに持ちこたえられるかという点を観測することが大切です。

標準的な粗利率は業種(業態)によって大きく異なります。粗利率が高い業種(サービス業など)では、売上が急減するととたんに固定費をまかないきれずに倒産の危機になってしまいます。一方、粗利率が低い業種(卸売業など)では、売上が大幅に減少しても、変動費の割合が大きいので原価も大きく減少する結果、一定の利益が確保できる可能性があります。
下記の例を見てください。
(例)
【A社】卸売業
売上5億円 粗利5000万円(粗利率10%) 営業利益1000万円(RPG20%) 営業利益率2%
【B社】製造業
売上1億円 粗利5000万円(粗利率50%) 営業利益1000万円(RPG20%) 営業利益率10%
【C社】サービス業
売上5000万円 粗利5000万円(粗利率100%) 営業利益1000万円(RPG20%) 営業利益率20%

上記の例では、C社は営業利益率が高く、A社の10倍を誇りますが、売上を1000万円以上失うととたんに赤字になってしまいます。一方でA社は売上を1000万円失っても、まだ900万円の利益を確保することができます。
つまり、これら3社の売上や営業利益率は大きく異なりますが、「売上の20%を失っても収支がトントンで持ちこたえられる状態(RPG20%)」という点で共通しているということができます。
この例からも、経営の安全性を示す指標としては、RPGが適切であるとご理解いただけると思います。

Q6 なぜ、固定費(販売費及び一般管理費)を3つに分類する必要があるのですか?

A6
どの経費を重点的に削減(抑制)すべきかを見える化するためです。

みらい会計では固定費(販売費及び一般管理費)を①「人」経費、②未来投資、③「物」経費の3つに分類してお伝えしています。

①「人」経費は、給与や賞与などいわゆる人件費で、社員の幸せに直結するものであり、できる限り削減してはいけない経費になります。

②未来投資は、商品サービスの研究開発や、社員の採用や社員の教育のために使ったお金です。広告宣伝費も将来の売上を作るための投資という意味で未来投資に含めます。未来投資を削減しすぎると、会社の将来も先細ってしまうので注意が必要です。

③「物」経費は、水道光熱費、家賃、交通費などその他全ての経費です。これらは全社員が協力して削減すべき経費になります。

Q7 戦略的に投資をする場合、単年度で赤字になるのはやむを得ないですか?

A7
いいえ。理由を問わず赤字は絶対に避けるべきです。

全ての会社は営利組織であり、利益を上げて納税をすることに存在意義があります。赤字は経営者にとってだけでなく、株主にとっても、取引先や従業員にとっても、好ましくないことであります。
1度赤字決算をしてしまうと、金融機関などからの信頼が一気に落ちてしまうだけでなく、「あのとき大丈夫だったのだから今度も大丈夫だろう」と気が緩み、何度も赤字を出すことにもつながりかねません。
経営者は利益を出すことで、株主にも、社会にも、従業員にも報いることができるのです。

Q8 貸借対照表上の総資産は多ければ多いほど良い会社と言えますか?

A8
いいえ。むしろ資産が多いのに利益が少ない会社は、利益を生む効率が悪い会社と評価されてしまいます。

会社の収益性は、総資産に対してどの程度の純利益を生み出すことができたことを示す総資産利益率(ROA)という指標で計られることがあるように、できるだけ少ない資産でできるだけ多くの利益を上げられるのが理想です。
特に、固定資産が多い会社は、いざキャッシュが必要になっても資産がお金に変わらず、経営にいき詰まることがあるので注意が必要です。

Q9 なぜ貸借対照表の借方(左側)は逆三角形、貸方(右側)は正三角形を目指すのですか?

A9
借方(資産の状態)はできるだけいつでもお金にして支払える状態、貸方(資産の調達先)はできるだけすぐに返す必要のない状態にしておくべきだからです。

貸借対照表の借方(左側)は資産の状態を示し、上に流動資産、下に固定資産が記載されています。流動資産は預金や有価証券などキャッシュに近いもの、固定資産は機械や不動産など、すぐにはキャッシュにならないもが該当します。会社に資産があっても必要なときにキャッシュが払えなければ倒産してしまうので、借方(左側)は下よりも上が大きい逆三角形になっているのが安全な会社の状態です。
一方、貸方(右側)は上から流動負債、固定負債、純資産の順に記載されます。流動負債はすぐに支払わなければならない債務、固定負債はいずれ支払わなければ債務、純資産は株主から預かって返済の必要がないものが記載されますので、上より下が大きい正三角形の状態が理想になるのです。

Q10 なぜ、自社内で会計処理ができる会社が経営を伸ばしているのですか?

A10
その時々の会社の状況に合わせて、改善策を実行できるからです。

自社内で会計処理ができず、税理士に会計を任せると、月次報告が1か月遅れになったり、極端な場合には1年に1回決算書が作成されたときにしか会社の経営状況を把握できないという事態が起きかねません。当然ながら、経営状況が芳しくなくてもこれに気付けず、すぐに策を打つことができません。
一方で、社内で基本的な会計処理ができ、リアルタイムで経営状況を把握できるようになると、うまくいっていないときには改善策を、うまくいっているときにはチャンスに乗じてさらにうまくいく策を、すぐに実行することができるのです。