会社の収益性を計る指標としては、仮に売上の何%を失っても倒産せずに持ちこたえられるかという点を観測することが大切です。
標準的な粗利率は業種(業態)によって大きく異なります。粗利率が高い業種(サービス業など)では、売上が急減するととたんに固定費をまかないきれずに倒産の危機になってしまいます。一方、粗利率が低い業種(卸売業など)では、売上が大幅に減少しても、変動費の割合が大きいので原価も大きく減少する結果、一定の利益が確保できる可能性があります。
下記の例を見てください。
(例)
【A社】卸売業
売上5億円 粗利5000万円(粗利率10%) 営業利益1000万円(RPG20%) 営業利益率2%
【B社】製造業
売上1億円 粗利5000万円(粗利率50%) 営業利益1000万円(RPG20%) 営業利益率10%
【C社】サービス業
売上5000万円 粗利5000万円(粗利率100%) 営業利益1000万円(RPG20%) 営業利益率20%
上記の例では、C社は営業利益率が高く、A社の10倍を誇りますが、売上を1000万円以上失うととたんに赤字になってしまいます。一方でA社は売上を1000万円失っても、まだ900万円の利益を確保することができます。
つまり、これら3社の売上や営業利益率は大きく異なりますが、「売上の20%を失っても収支がトントンで持ちこたえられる状態(RPG20%)」という点で共通しているということができます。
この例からも、経営の安全性を示す指標としては、RPGが適切であるとご理解いただけると思います。
みらい会計では固定費(販売費及び一般管理費)を①「人」経費、②未来投資、③「物」経費の3つに分類してお伝えしています。
①「人」経費は、給与や賞与などいわゆる人件費で、社員の幸せに直結するものであり、できる限り削減してはいけない経費になります。
②未来投資は、商品サービスの研究開発や、社員の採用や社員の教育のために使ったお金です。広告宣伝費も将来の売上を作るための投資という意味で未来投資に含めます。未来投資を削減しすぎると、会社の将来も先細ってしまうので注意が必要です。
③「物」経費は、水道光熱費、家賃、交通費などその他全ての経費です。これらは全社員が協力して削減すべき経費になります。
全ての会社は営利組織であり、利益を上げて納税をすることに存在意義があります。赤字は経営者にとってだけでなく、株主にとっても、取引先や従業員にとっても、好ましくないことであります。
1度赤字決算をしてしまうと、金融機関などからの信頼が一気に落ちてしまうだけでなく、「あのとき大丈夫だったのだから今度も大丈夫だろう」と気が緩み、何度も赤字を出すことにもつながりかねません。
経営者は利益を出すことで、株主にも、社会にも、従業員にも報いることができるのです。
会社の収益性は、総資産に対してどの程度の純利益を生み出すことができたことを示す総資産利益率(ROA)という指標で計られることがあるように、できるだけ少ない資産でできるだけ多くの利益を上げられるのが理想です。
特に、固定資産が多い会社は、いざキャッシュが必要になっても資産がお金に変わらず、経営にいき詰まることがあるので注意が必要です。
貸借対照表の借方(左側)は資産の状態を示し、上に流動資産、下に固定資産が記載されています。流動資産は預金や有価証券などキャッシュに近いもの、固定資産は機械や不動産など、すぐにはキャッシュにならないもが該当します。会社に資産があっても必要なときにキャッシュが払えなければ倒産してしまうので、借方(左側)は下よりも上が大きい逆三角形になっているのが安全な会社の状態です。
一方、貸方(右側)は上から流動負債、固定負債、純資産の順に記載されます。流動負債はすぐに支払わなければならない債務、固定負債はいずれ支払わなければ債務、純資産は株主から預かって返済の必要がないものが記載されますので、上より下が大きい正三角形の状態が理想になるのです。
自社内で会計処理ができず、税理士に会計を任せると、月次報告が1か月遅れになったり、極端な場合には1年に1回決算書が作成されたときにしか会社の経営状況を把握できないという事態が起きかねません。当然ながら、経営状況が芳しくなくてもこれに気付けず、すぐに策を打つことができません。
一方で、社内で基本的な会計処理ができ、リアルタイムで経営状況を把握できるようになると、うまくいっていないときには改善策を、うまくいっているときにはチャンスに乗じてさらにうまくいく策を、すぐに実行することができるのです。